公開日 2023年11月14日
更新日 2024年01月16日
共同住宅の防犯環境設計
領域の確保
敷地周囲に見通しの良い塀、柵などを設けて敷地領域を明確にし、犯罪者が侵入しにくい環境をつくる。
見通し・監視性の確保
周囲からの見通しを確保し、犯罪者の犯行意欲を抑制する。
自主防犯
施設の強化
建物の共用出入口、共用エレベーターの防犯性や住戸の玄関、窓の扉、錠、ガラスなどを強化し、犯罪者が住戸へ侵入するのを防ぐ。
接近の制御
周囲を塀などで囲ったり、共用玄関にオートロック方式を導入するなどして、進入経路を制限して、犯罪者の侵入を困難にする。
安全で安心できる住宅
4つの防犯要素は補強し合います。
防犯要素 | 施設の強化 | 接近の抑制 | 領域の確保 | 見通し・監視性の確保 |
---|---|---|---|---|
防犯対策 | ||||
道路等からの見通しの良い塀・柵等の設置 | ◎ | ◎ | ||
常夜灯の配置 | ○ | ◎ | ||
敷地出入り口を一箇所とする | ◎ | ○ | ||
補助錠の設置(ツーロック) | ◎ | ○ | ||
不正解錠に強い扉・錠 | ◎ | ○ | ||
防犯ガラス、面格子等 | ◎ | ○ | ||
録画できる防犯ビデオカメラ | ◎ | ○ | ○ | |
警備会社の防犯監視システム | ◎ | ◎ | ○ |
複数の防犯対策をバランスよく取り入れるのがポイントです。
1.塀・柵(フェンス)・垣 |
2.共用出入口 |
3.共用メールコーナー |
4.管理人室 |
5.エレベーターホール |
6.エレベーター |
7.共用廊下・共用階段 |
8.屋上 |
9.自動車駐車場・自転車・オートバイ置き場 |
10.庭木 |
11.住戸の玄関 |
12.住戸の窓 |
13.ベランダ |
14.ホームセキュリティの活用 |
15.自主防犯(ソフト対策) |
1.塀・柵(フェンス)・垣
- 塀・柵・垣は、道路等からの見通しを良くするとともに侵入の足場とならないものとする。
- 敷地出入口は、できる限り一箇所とし、人通りの多い位置や周囲からの見通しがよい位置に設置する。
- 人が隠れられるような死角をつくらない。
2.共用出入り口
- 共用玄関は、周囲からの見通しが良い位置に配置する。
- 共用出入口の扉には、オー卜ロック方式を導入することが望ましい。
- 共用玄関にオートロック方式を導入した場合には、共用玄関以外の共用出入口の扉にもオートロック方式を導入する。
- 共用玄関の夜間照明は、50ルクス(10m先の人の顔、行動を明確に識別でき、誰であるか明確に分かる程度)以上の照度を確保する。
- 共用玄関以外の共用出入口の夜間照明は、20ルクス(10m先の人の顔、行動が識別でき、誰であるか分かる程度)以上の照度を確保する。
- 録画できる防犯ビデオカメラを設置するのが望ましい。また、防犯カメラ設置の表示をすることで更に効果が高まる。
3.共用メールコーナー
- 共用玄関付近から見通しの良い位置に配置する。
- 夜間照明は50ルクス(10m先の人の顔、行動を明確に識別でき、誰であるか明確に分かる程度)以上の照度を確保する。
- 録画できる防犯ビデオカメラを設置するのが望ましい。
4.管理人室
- 共用玄関、共用メールコーナー(宅配ボックスを含む)及びエレベーターホールを見通せる位置やこれらに接近した位置に設置する。
5.エレベーターホール
- 各階のエレベーターホールは、共用玄関付近や管理人室、各住戸等から見通しの良い位置に配置する。
- 夜間照明は、50ルクス(10m先の人の顔、行動を明確に識別でき、誰であるか明確に分かる程度)以上の照度を確保する。
- 録画できる防犯ビデオカメラを設置するのが望ましい。
6.エレベーター
- エレベーターは、外部から見通せる窓、又は、スリットの入った扉を設ける。
- エレベーターのかご内の照明は、50ルクス(10m先の人の顔、行動を明確に識別でき、誰であるか明確に分かる程度)以上の照度を確保する。
- 運行は、「防犯運行ボタン」を押すと一人しか乗れなくなり、目的階まで直行できる「防犯運行方式」、あるいは「夜間各階止まり方式」を採用する。
- 非常ボタンは、かご内の2箇所以上の異なる位置に設ける。
- 録画できる防犯ビデオカメラを設置することが望ましい。
7.共用廊下・共用階段
- 共用階段は、住戸の玄関ドアと正対させ、共用廊下に開放された形態であることが望ましい。
- 手すり・腰壁は、見通しの良いものとする。
- 夜間照明は、20ルクス(10m先の人の顔、行動を識別でき、誰であるか明確に分かる程度)以上の照度を確保する。
- 各階の踊り場に、非常ボタンを設置することが望ましい。
8.屋上
- 屋上への扉は、通路と屋上を完全に遮断する構造とする。
- 扉の錠は、管理人室等からのリモコン開閉システムや災害自動感知錠とするのが望ましい。
- 録画できる防犯ビデオカメラを設置するのが望ましい。
9.自動車駐車場、自転車・オートバイ置き場
- 周囲や住戸等からの見通しが良い位置に設置する。
- 自動車駐車場や自転車・オートバイ置き場の周囲に見通しの良い扉(自動ゲート管理システム)や柵等を設置する。
- 自動車駐車場や自転車・オートバイ置き場とそれ以外の敷地との境界線にも見通しの良い扉や柵等を設置する。
- 自動車駐車場の駐車場所の路面において、20ルクス(10m先の人の顔の向き、目、鼻、口の位置が識別できる程度)以上の照度を確保する。
- 自動車駐車場の車路路面において、10ルクス(5m先の人の大まかな向きが識別できる程度)以上の照度を確保する。
- 自転車・オートバイ置き場の照度は、3ルクス(4m先の人の挙動、姿勢等が識別できる程度)以上の照度を確保する。
- 自転車・オートバイ置き場には、チエーン用バーラック等の盗難防止設備を設置する。
- 録画できる防犯ビデオカメラを設置するのが望ましい。
- 自主防犯を呼び掛ける防犯指導看板等を見えやすい場所数箇所に掲出する。
10.庭木
- 庭木は、周囲からの見通しを考慮し、樹種の選定や植栽の位置に配慮する。
※低木は、地表から1m以下とする。
※高木は建物から2m以上離すとともに地表から1.5m以下の下枝をせん定する。
11.住戸の玄関
- 玄関は、できる限り道路などから見通せる位置に設置することが望ましい。
- 玄関のドアや錠は、ピッキング・カム送り解錠(バイパス解錠)・サムターン回しなどの不正解錠や破壊に強いものとする。
※錠のカンヌキが外側から見える場合は、ガードプレートを取り付ける。
※錠はCP錠(財団法人全国防犯協会連合会がCP認定制度に基づき、認定した錠)などを使用する。
※錠シリンダーは、CP-C錠(財団法人全国防犯協会連合会がCP認定制度に基づき、認定した錠シリンダー)などを使用する。 - 主錠と同様の高い防犯性を有する補助錠を取り付ける(ワンドアツーロック)。
- ちょうつがいは、軸(ヒンジピン)が容易に抜けないものを使用する。
※ドアボス(ドアはずしを防ぐ金具)は、扉のちょうつがいを外して侵入される手口に効果的である。 - ドアには、ドアチェーンを取り付ける。
※ドアガードタイプのものは、ドアの外から外される危険性があるので注意する。 - ドアスコープとインターホンかテレビドアホンを取り付ける。
- ドアに郵便受けを設ける場合は、容易に破壊されたり、受け口から屋内を覗かれないものや受け口から手を差し入れられないものとする。
- 明かり取りガラス部は、錠付近に設けないのが望ましい。
12.住戸の窓
- 窓は、できるだけ周囲からの見通しが良く、外部から簡単に接近できないような位置に設置するのが望ましい。
- 補助錠を設置し、ツーロックにする。
- 窓ガラスは、破壊に強い防犯合わせガラス又は複層ガラスを使用することが望ましい。
- 雨戸又はシャッターを設置する。
※掃き出し窓には、雨戸又はシャッターを設置する。
※雨戸は、雨戸本体と雨戸粋が一体となった金属製雨戸を設置するのが効果的である。
※雨戸錠は、上下2箇所で施錠するものが効果的である。 - 共用廊下に面した腰高窓(肘掛け窓)には、面格子を設置する。
※面格子は、防犯性が高い、鉄製又はアルミ鋳物製で、サッシー体型の井げた、若しくは菱クロス格子が効果的である。
※面格子は、防災面を考慮して、内側から開閉できるものが望ましい。 - ルーバー窓(ジャグジー窓)には、必ず面格子を設置する。
13.ベランダ
- ベランダは、電柱、塀、高木など、侵入の足場となるものとの位置関係に留意する。
- ベランダの手すり・腰壁は、プライバシーの保護、転落防止又は構造上支障のない範囲において、周囲からの見通しの良いものとする。
- ベランダが侵入されやすい位置にある場合は、手すりを高くしたり、トップガードを設置する。
- 雨樋、配水管やエアコンの室外機は、窓やベランダに接して設置しない。
- 共用廊下に